« 名作「足長おじさん」 | トップページ | 母のミシン その2 »

2004/10/31

母のミシン その1

考えて見ると、ミシンは不思議の固まりのようだ。
糸巻きから引き出した糸を、何の必要があるのか、あっちこっちに引っ掛けて、紆余曲折を繰り返した後に、ようやく辿り着いた針に通す。そして、はずみ車をゆっくりと回すと、おもむろに針が小さな穴に下りてゆく…。さらに、下に向かって下りていた針は、頃合を見計らったかのように、今度は上に上がって来る。すると、何と言う事だろう、元に戻った針に導かれるように、見事に穴から下糸が顔を出す。後は、上糸と下糸の間に布を挟んでミシンを動かすだけで、整然とした縫い目が現れる。その間にも、台から遠慮がちに突き出した何かギザキザの付いたモノが、陰でせっせと布を移動させている。……これを不思議と言わずして何と言おう。

私には、未だにこの仕組みが分らない。エンジンのシリンダーのように、踏み板の上下運動が回転運動に変換されるまでは理解出来るが、それから先は、私の理解の範疇を越えている。(ボビンケースの中で、どうやって上糸と下糸が絡まるのだろう……?)
勿論その他にも、身の回りには仕組みが分らない物ばかりで、こちらはただその恩恵に与るだけだ。しかし、それらの殆どが電気の力に頼っているのに比べ、ミシンの原理は純粋に力学的なものだ。そして、現在でも基本構造はあまり変わっていないのだろうから、これはもう、人間の技術の粋を集めた究極の姿と言ってもいいのではないだろうか。その、先人の知恵には畏敬の念すら覚える。

大人になっても分らないのだから、子供の頃は尚更だ。ミシン掛けする母にまとわりついて、飽かず眺めていたものだった。そして、その不思議な機械をいともたやすく扱う、今よりも若い母がそこにいた。
あの頃は、自分ではどうにもならないような困難な事も、母に泣きつくと不思議と大概の事はケリがつくのだった。

今でも、「エ?」「ひえー!」「ウソ!」と、叫んでしまう私は、子供の目にはどう映っているのだろう。

1027safinia.jpg 

  
 あんなに暑かった夏を乗り越えた、
 テーブルのコンテナも
 そろそろ冬用とバトンタッチ。
 感謝を込めて、パチリ。
 

|

« 名作「足長おじさん」 | トップページ | 母のミシン その2 »

コメント

とても心に残る記事を読ませてもらい 今日は幸せな気分です。

徹底的にメカニカルな話しの先に
>今よりも若い母がそこにいた。
に つながるなんて思ってもみなかったです。

投稿: nezimaki | 2004/10/31 20:03

ミシン、不思議ですばらしい機械ですね。人間の知恵と工夫の結晶のような道具は感動ものです。今日のnanbuさんの記事を読ませていただいて、私は自分の母へと思いを持っていかれました。私が物心付いたときからすでに病でどんどん体が不自由になっていきましたが、若いときに洋裁を習った人でしたので、小さいときには洋服を作ってくれたこともありました。病になどならなかったら、ミシンを踏み、洋裁の仕事をしていたやも知れません。
ところで、私のお気に入りココログリストの中の、simple life のサイトに、マッキントッシュをお使いのみなさんへというカテゴリがあって、その中にマックユーザーの方の文字化けについて@niftyに問い合わせたところ、マックユーザーの方はインターネットエクスプローラーではなくネットスケープナビゲーター7を使うと解決できるようだと回答いただいた、というお話が載っていました。お役に立つかどうかわかりませんが、ご紹介させていただきます。

投稿: ポージィ | 2004/10/31 20:51

コメントありがとうございます。

>nezimakiさん
あたたかいコメント、素直に嬉しいです。
書き始めたら次々に書きたい事が出て来て、思ったよりも長くなってしまったので、その1・その2に分けました。
自分でも、ミシンにこんなに思い入れがあるとは気がつきませんでした。

>ポージィーさん
その2のために、あちこち検索したのですが、改めてミシンの偉大さを感じました。「先人への畏敬の念」は、単なるレトリックじゃありません。
きっとお母様も、ご不自由な体で、精一杯世話をして下さったんでしょうね。

追伸
ご紹介ありがとうございます。実は、simple lifeさんのサイトは、拝見した事があります。(りんご巻き巻き〜の紅玉の記事で。)cueさんの人柄が偲ばれる、素敵なサイトですよね。シャイなおじさんは眺めるだけだったのですが、今度ごあいさつに伺おうかな?
ただ、ネットスケープの切り替えは、私にとって3Dより難しそう・・・。(汗)

投稿: nanbu | 2004/11/01 08:21

こちらでははじめまして、simple lifeのcueと申します。早速やってきてしまいました。ネットスケープナビゲーターの件は、お役に立てて嬉しいです。やーもーなんか、照れちゃいます。
足踏みミシン、いいですよね。母が手作りの服を着せてくれたおかげで私も興味を持ち、学校にまで通って職業用足踏みミシンも持っています。
なかなか時間が取れなくて踏む機会がありませんが、あれを直してこれを作ろうとか、この布で何を縫おうとか、考えているだけで楽しいんですよね。

nanbuさんのイラストのサイト、ため息が出ちゃいました。着物の女性も描かれるんですね、ステキですね。またゆっくり寄らせていただきたいです。

投稿: cue | 2004/11/02 04:13

cueさん、ようこそおいで下さいました。
simple lifeさんのブログは、自然体なのにオシャレで、素敵なサロンのようなサイトですね。
でも、優雅なだけじゃなくて、店頭デモ機で確認したり、@niftyに連絡したりと、その行動力にも敬服します。(私は「どうしよう…。」と戸惑うだけで…。)

HPも見て頂いたとのこと、ありがとうございます。
また、これからもいらして下さい。お待ちしています。

投稿: nanbu | 2004/11/02 07:29

http://omosiroigazou.blog119.fc2.com/blog-entry-140.html
ミシンの原理

投稿: | 2008/04/25 20:59

 
「とっても分かりやすいミシンの原理 面白画像」へのリンク、ありがとうございます。(^^) 動くアニメーションで、その仕組みがよく分かりました。
ボビンケースが回転しながら上糸を引っ掛けて、それを自身の下糸に絡ませているんですね! まさに「百聞は一見に如かず」でした。

投稿: nanbu | 2008/04/26 08:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55071/1817408

この記事へのトラックバック一覧です: 母のミシン その1:

« 名作「足長おじさん」 | トップページ | 母のミシン その2 »