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2005/03/13

貸本屋さん

それはもう、記憶から欠落していたけれど、「少年マガジン」等の漫画雑誌隆盛の前に、確かに貸本屋さんの時代があった。

その頃、本屋さんは電車かバスで行く大きな街にしかなくて、私が住んでいた町にはなかった。でも、貸本屋さんならあった。今はやりの「懐かしの」昭和30年代の町並みにあるように、当たり前のようにそこにあった。

土間の壁一面の本棚から好きな本を選び、帳場にちょこんと座っているおばちゃんに渡す。そして、登録してある自分の名前を書いて、借りてくる。ちょうど図書館と同じシステムだ。
そこにあった漫画本もハードカバーで、貸し出される事を前提に、丈夫に作られていた。なかには「読者の声」のコーナーがあるシリーズ本もあったりして、「0号の何々が面白かった」なんて投書が載っていたのだから、いかに貸し本のルートが確立していたかがわかる。

私が少し大きくなった頃、バス通りに新しい本屋さんができた。(そこで、私と漫画雑誌とのお付き合いが始まるのだけれど)ただ、最初は駅の売店のスタンド売りのように、新刊の雑誌はごく一部で、大部分は貸し本だった。(書店として経営が成り立つかどうか、様子を見ていたのだろう)
そこは、今までのように名前ではなくて、登録すると番号が割り振られた。(自分の番号が106番だったのを思い出してしまった!)IPアドレスのようなもんだろうか。

その新しいお店ができた頃、昔からあった例の貸本屋さんが店じまいすることになった。
在庫一斉処分ということで、本棚にある漫画本を安く売ってくれるという。
何冊か選び、おばちゃんの所に持って行くと、「これが00円だなんて……。新品だから得よ」と、悔しさと諦めが混じったような、複雑な目で私を見て言った。それは、いつものやさしい顔ではなくて、自分が何か悪い事をしてしまったような気にさせられた。
もしかしたら、それは私が初めて見た「大人が本心を見せた時の顔」だったのかもしれない。

一方、新しくできたお店の方もだんだんに新刊の本が増えていき、いつの間にか普通の本屋さんになっていった。それにつれて私の方も、漫画本は買うのが当たり前になっていく……。

そして、大人になってその前を通っても、昔そこが貸本屋さんだった事など、記憶の底に沈んでしまったのだった。
(昔の事って、どうしてこう、思い出すと切なくなるのだろう……)

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コメント

トラックバックありがとう~。 半身だけウェブに顔を出しています・・・・そのぐらいなら思いきって仕事にだけ専念すればいいのに 浮気ぐせが(^^)

nanbuさんの記事を読んでいて そういえば昔は雑誌を自転車に乗って 本屋さんが配達していたな~。 発売日は当然 朝から待ち遠しくてそわそわしていて その配達する自転車を発見すると やった~!!って 小躍りしていました。 子どもの頃に育った小さな町の いちばん大きかった本屋さんは もう店をたたんでしまっていたのを知り さみしかった。 

投稿: nezimaki | 2005/03/14 13:29

nezimakiさん、ありがとうございます〜!
お仕事が年度末に向けての追い込みの中、
おじゃましちゃ悪いかな?と思って密かにTBしたんですけど。

>半身だけウェブに顔を出しています・・・・そのぐらいなら思いきって仕事にだけ専念すればいいのに 浮気ぐせが(^^)

私も、そのぐらいなら思いきってトラバしなければいいのに。(笑)
nezimakiさんが思い出させるんですもの。(^^;)

>そういえば昔は雑誌を自転車に乗って 本屋さんが配達していたな〜。

嗚呼!また、思い出しちゃったです〜。
ウチにも自転車で本屋さんが。
『たのしい小学○年生』読んでました…。(懐)

投稿: nanbu | 2005/03/14 15:17

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