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2005/05/03

馬のパン屋さん

05koinobori子供の頃、「チンドン屋さんが来る!」というのはビッグニュースだった。
誰かから、「どこそこにいる」と聞けば、何をおいても飛んで行ったものだ。

何をするわけでもない。ただ、練り歩く後をついて行くだけ。
それでも満足だったのは、これといった娯楽もない日常の中で、いっとき別世界に浸る事ができたからなのだろう。時代劇の衣装をまとった人達を間近で見て、賑やかな演奏を聴くのは、なかなかの高揚感があった。

その頃楽しみだったものでは、紙芝居なんかもそう。
道具一式を、自転車の荷台に括り付けた紙芝居屋さんが来ると、子供達が集まってくる。握りしめた10円玉を差し出して、あんずジャムを付けたウェハースをもらい、それを食べながら観るのだった。

ただ、いつも来てくれるわけではない。
だから、時々行商の人達がやって来るのさえ、楽しみの一つだった。
「富山の薬売り」のオジサンからもらう、オマケの紙風船。そういったものが、本当に嬉しかった。
とにかく、何か「いつもと違う事」に出会いたかったのだ。


そんな中でも、一等賞は「馬のパン屋さん」だろう。
結局2、3回しか来てくれなかったけれど、それだけに一番待ち焦がれていた。

蒸しパンの屋台を引いた白馬は、それはそれは美しくて、幻想的でさえあった。蒸しパン自体はそれほど美味しいものではなかったけれど、その白馬を見られるだけで充分だった。

子供の頃は何でも大きく見えるもの。しかし、それを割り引いて考えても、ポニーではなかったと思う。なにせ、見上げる程の大きさだったのだから。
まだまだ、交通量も多くない時代だったからこそ、そんな大きな馬が住宅街の路地まで来られたのだろう。

綺麗なものや、豪華なものは、テレビでしか見られなかったあの時代。
子供にさえ畏敬の念を抱かせるような、あの神々しい美しさは今でも忘れられない。

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