おねだり
小学生の頃、父と母との間でこんなやり取りがあった。
会社が休みの日、買い物に出かけると言う父に、母は「だったら、この子も一緒に連れてって。」と言った。(この子というは、一人ボケっと家にいた私の事)
その時の父の返事が忘れられない。
「一緒に連れてっても、『アレ買って、コレ買って。』と言わないからつまんねぇ。」
それを聞いた私は、「おねだりをされる方が嬉しい。」という父の本音を知って、びっくりした。
言われてみれば、確かに私はおねだりをしない子だった。
でも、それには理由があった。
あれはまだ、小学生にもなっていない頃だと思う。
親戚が集まった新年会の帰り道、時計屋の前で父に呼び止められた私は、ディズニーの腕時計を買ってもらったのだ。
別に、私がおねだりした訳ではなかったけれど、幼い私に断るすべもなかった。
これは一大センセーションを巻き起こしたらしい。
「同じ年頃の子供を持つご近所から、アレコレ言われて困った。」
と、後になって母がこぼしていた。
それは、一つ屋根の下にいる他の兄弟なら尚更で、その矛先は当然のように私に向けられた。
こうして私は、「イイ目をみると後が怖い。」という浮き世のことわりを、幼くして会得してしまったのだった。
実は、私はその他にも子供用自転車を買ってもらっている。
自転車屋さんの前で父に呼び止められる、という同じなりゆきで。
本当にちっちゃな自転車で、すぐに乗れなくなってしまったけれど、この反響は腕時計の比ではなかった。
私のすぐ上の兄は、行動半径が広がる小学校高学年の頃、自分用の自転車を買ってもらっている。(やはり、需要がでてから供給を受ける方がトクだと思った。)
私はといえば、あの件以来「お前は自転車を買ってもらったんだから…。」が付いて回った。
兄の自転車を借りながら、「ボクも自転車が欲しい。」とは言い出せなかった私。(あの時、なぜ「いらない!」と言えなかったのかと、長いこと悔やんだものだった。)
家族の中に、その時の私の胸中を忖度した者がいたかどうかは、はなはだ疑問である。
そして、「私だけが子供用自転車を買ってもらった。」という事実だけが、皆の記憶に残っていく。
その時の気分で、後先の事も考えずに行動する。
そんな父の、江戸っ子気質。
そのツケを払わされる身としては、迂闊におねだりもできなかった。
そして現在。
その気質を、決して受け継いでいないとは言えない私。
自分の中のその因子によって、今もツケを払わされ続けている。
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コメント
こんばんは。
子供時代のnanbuさんがなんだかいじらしくて…
コメントを考え続けていたんですけれど、結局何も浮かびません。
そういうことも含めたいろんなことが、今のnanbuさんを
形作っているのだな、などと思いました。
当然のことなのですが。
現在、ご自分の一部にある江戸っ子気質で、いったいどんな
ツケを払っていらっしゃるのですか?(^^)
投稿 ポージィ | 2005/08/30 21:57
>ポージィさん、こんにちは。(^^)
>現在、ご自分の一部にある江戸っ子気質で、いったいどんな
ツケを払っていらっしゃるのですか?(^^)
そ、それは、皆さんもご存知かと…。(汗)
良く言えば「ノリがいい」。
悪く言えば・・・ね。(^^;)
いつも、「調子に乗って、何であんなコトしちゃったんだろう。」の繰り返しです。
「天然」の父の場合は、ある意味愛すべきキャラクターと言えなくもないんですけど。
それを反面教師に育った私は、「ヤレヤレ」と思いながら、気がつけば自分も同じ事をしてたりして…。
こうして、「内省的で傷つきやすいお調子者」という人格が形成されたのでございます。(^^;)
投稿 nanbu | 2005/08/31 06:59