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2007/01/10

鉛筆削り/その1

Enpituヌイグルミの耳のように、ちょこんと上に飛び出した小さな突起。

それを両側から押さえると、小さな丸い穴をふさいでいたギザギザが開く。
鉛筆をその穴に入れ、耳の付いた押さえを引き出して手を離すと鉛筆が固定される。
あとは反対側のハンドルをグルグル回すだけで、ガリガリと鉛筆が削られていく。

あの懐かしい手動式の鉛筆削り。

小学生の頃、兄の机にあったそれで、私も鉛筆を削っていた。
でも、私の記憶の中では、当の兄や父は不思議と小刀で削っている。

ささがきゴボウの作り方は、よく「鉛筆を削るように」なんて言われるけれど。
ちょうどそんなふうに、シュッシュッと削っていた。
そしてそれは、何か厳かな儀式のようにも見えた。

私がそれを真似ても、上手には削れなかったけれど。
降りたたむと4Cmほどの大きさで、それを広げるとカミソリの歯が出てくるボンナイフ。それは、当時どの子の筆箱にも入っていたものだった。


鉛筆削りが電動になる頃、私の筆箱からもしばらくボンナイフが消えていた時期がある。しかし、鉛筆デッサンの勉強を始めた頃、私はまたカッターナイフで鉛筆を削りだした。

顧問の先生から指示されていたのは、5Bや6Bの鉛筆で描くこと。
でもそうすると、柔らかいその芯はスグに丸くなってしまうから。
多めに削り出した芯の先を、ナイフで細く細く削っていた。


立体の白い石膏像を、平面の白い紙の上に写し取るデッサン。

陰影を描くというより、その面の連なりを細い鉛筆の線でなぞっていく。
それは描くと同時に、その立体を自分の中に捉えるための作業。

上手い人が描いたデッサンの線は、石膏像の輪郭を超えて、あたかも見えない裏側にまで続いているように見える。
手を伸ばせばさわれるようなほどに。

そんなデッサンが描けるよう、私は鉛筆を削るのだった。
鉛筆の先を研ぎ澄まして、ひたすら石膏像の表面をなぞるのだった。


そして今、私はキーボードに向かって、その時々の自分の気持をなぞっている。
そしてそれを写し取ろうとしている。
頭の中の鉛筆を削りながら。
 
 
●kokoさんの素敵な鉛筆の思い出はこちら(^^) → 青空生活: えんぴつ

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コメント

ノスタルジーを感じさせられると同時に、仕事に向かわれる
nanbuさんの、プロとしての凛とした姿勢が伝わってきます。
普段は優しいお顔に厳しさが加わった様子が目に浮かぶようです。

鉛筆削りでゴリゴリと鉛筆を削った懐かしい手の感触と、
ナイフでシュッシュッと木の部分を削り最後に芯の部分をズズズと
尖らせるときの感触、リアルに甦ってきました。
私はnanbuさんのようには細長く美しくは削れませんでしたが…
(ちなみに、電動鉛筆削りは友人の家でしか使ったことありません)
ナイフで鉛筆を削るという行為は、心の準備をもしているのですね。
何故か武士が独り静かに刀を研ぐ光景が脳裏に浮かびました。
こういう時間も「間(ま)」というのでしょうか。
便利便利に走ってしまう現代では失われがちなものですね。

投稿: ポージィ | 2007/01/10 10:41

 
ポージィさん、コメントありがとうございます。(^^)

>最後に芯の部分をズズズと尖らせるときの感触、

あぁ〜!そうそう!!
芯を尖らせるときの感触は、まさに「ズズズ」ですね♪
力を入れ過ぎると芯が折れちゃうし、途中引っ掛かると段になっちゃうし。
「ズズズ」加減が難しいんですよね。(^o^)

あ、時代劇でお侍さんが刀を手入れするシーンとかありますよね。
「たんぽ(?)」で刃先をトントンと叩いたり。
「心の準備」というフレーズに、なるほどと思いました。
アレンジはもちろん、何気ない風景の一コマを切り取ったポージィさんの写真を拝見して、ハッとする時がありますけど。
そんなシャッターチャンスを見つける時には、やっぱりポージィさんも鉛筆を尖らせてるんだろうなぁ。と思ったりしています。(^^)

投稿: nanbu | 2007/01/10 12:02

ボンナイフ って言うんですか?
はい、、確かに筆箱に入ってた時期がありました(^^)

手動式の鉛筆削りで色鉛筆を削ると
芯を尖らせると折れてしまうので
結局 ナイフで削ってたような記憶が・・・
中学生になると シャープペンシルに変わり
筆箱から鉛筆が消えて行きました

大人になっても文房具に興味あるのは
ポージィさん同様 ノスタルジーを感じるからですね

投稿: miki | 2007/01/10 17:04

 
mikiさん、コメントありがとうございます。(^^)

あ、mikiさんの筆箱の中にもボンナイフがあったんですね♪

>手動式の鉛筆削りで色鉛筆を削ると
>芯を尖らせると折れてしまうので

ああぁ〜!そうです、そうです。思い出しました。
色鉛筆って芯が柔らかいから、鉛筆削りの中で折れて詰まったりするんですよね。
何でボンナイフを入れてたんだろうと不思議だったんですけど。
色鉛筆とか赤鉛筆を削ってたのかもしれませんね!(・o・)
鉛筆がシャープペンシルに変わって、赤鉛筆がボールペンに変わって。
サインペンなんかも使ってましたよね。
(今だったらマーカーでしょうか?)

文房具って、なんかノスタルジーをくすぐられますね。(^^)

投稿: nanbu | 2007/01/10 20:24

子供の頃,クラスメートは当然電動の鉛筆削りを使っていたけれど自分は手動ハンドルの鉛筆削りでした。
それどころか手のひらに収まる銀色の原始的な鉛筆削り器を最も愛用していました。
鉛筆を削るのは楽しいです。小さな鉛筆削り器を握りしめ,差し込んだ鉛筆を回すと中から扇形の薄片が出てきます。
力加減に気をつけないとその薄片はたやすく切れ切れになってしまいます。
まるでりんごの皮を剥いたかのように長く連なるのが楽しみでした。
ティーンになると今度はカッターナイフを使ってそれはそれは綺麗に円錐型に削ることに没頭しました。
「電動のほうが便利だよ」という言葉は私の耳には入りません。なぜなら鉛筆を削るという行為自体が目的だったから。
何の目的?ってもちろん勉強からの逃避です。

月日は流れて自分の子供が小学生に上がるとき,電動の鉛筆削りは買い与えませんでした。
しかし買い与えたハンドル式の手動鉛筆削りは2年も使うとネジがゆるんだのかハンドル先の持ち手が取れてしまいました。
それでも子供に諭します。
「ほら,こうやってしっかり押さえて右手の手のひらでハンドル回すと削れるでしょ。」と。
そして続けるのです。
「鉛筆を削るのもいい気分転換になるでしょ。それに便利なものばっかり使ってても手先は器用にならないし。」

でも実は自分の中で葛藤しています。「新しい鉛筆削りを買ってやるべきか,やらざるべきか」


…大げさに書きましたが,ただ電動鉛筆削り機のすごさについていけないだけです。(^_^;)

投稿: ろーど | 2007/01/11 00:12

 
ろーどさん、コメントありがとうございます。(^^)

うんうん。鉛筆削りといったら、ろーどさんが愛用なさってた鉛筆削り器も外せませんよね。これで三役揃い踏みでしょうか。(^.^)
私が持ってたのは、刃以外がプラスチック製のでしたけれど。
銀色というと、本体も本格的な金属製のですか?

>差し込んだ鉛筆を回すと中から扇形の薄片が出てきます。

そうそう、そうなんですよねー!
私もどれくらい長く剥けるかチャレンジしたりしましたけど。
難しくて、せいぜい半分閉じた扇子くらいにしかなりませんでしたぁ。(^^;)

>それはそれは綺麗に円錐型に削ることに没頭しました。

あぁ…分かります。変な言い方ですけど、なんかこう「捧げる」って境地というか。
そのストイックさがまたいいんですよね♪
きっとろーどさんは、そうやって気持を奮い立たせて勉強に立ち向かっていったんですね。

凄みさえ感じるほどの、ろーどさんの洞察力には常々敬服していますが。
(↑これは褒め言葉ですよ)
それは、こんなところからも培われたような気がしました。(^.^)

パソコンを使うようになって、手間いらずのラクチンさに驚きましたけど。
同時に、その尋常じゃない疲れ方を訝しく感じてました。
もしかしたら、以前の煩わしい手間が、良い気分転換になってたんじゃないかなぁ。
と、秘かに思っています。

投稿: nanbu | 2007/01/11 08:06

nanbuさんの記事を読んで、昔のことを思い出しました。
早速私のブログのネタにさせていただきますね。

ところで鉛筆削り。
私が小学校に上がるとき、なぜか我が家に電動のものがやってきました。
そのようなものをポンと買い与えてくれるような両親ではなかったのですが、
きまぐれで買ってくれたのか、誰かがくれたのか、理由はいまだわかりません。
でも実は、電動より手動、それよりナイフで削ったもののほうが好きなのです。
鉛筆を削る行為が好き。
今でもうまく削る事はできないのですが。
そして、うまく削れない理由のひとつは、道具にもあるのではとも。
薄っぺらの刃は、ちょっとしたことで鉛筆のやわらかい木に食い込み、
芯をとがらせようとしてでこぼこにしてしまいます。
父が使っていたような小刀なら、もっと上手に削れるような気がするのは
幻想でしょうか?

投稿: koko | 2007/01/11 12:43

 
kokoさん、コメントありがとうございます。(^^)

あ、kokoさんも鉛筆を削るのがお好きなんですね♪
鉛筆を削る行為自体を楽しむ人って、以外と多いのかもしれませんね。

>父が使っていたような小刀なら、もっと上手に削れるような気がするのは
>幻想でしょうか?

おぉ!私もまったく同じ意見です。
華奢なボンナイフだと、なかなか上手く削れないんですよね。
私も、それはあくまでも学校で使う携帯用で。家で削る時は父の小刀を借りてました。
ただ、家に鉛筆削りはあったはずだし。どんな時に小刀で削ったのかよく覚えてないんですけど。(^^;)
父はまた、その小刀を砥石で研いだりして。
物が少なかった時代は、道具を大切にしてたんだなぁと思いました。

>早速私のブログのネタにさせていただきますね。

どんな思い出でしょう?私も楽しみにさせていただきます。(^o^)

投稿: nanbu | 2007/01/11 15:28

 nanbuさんの絵への気持ちが伝わる気がしました。別サイトの絵のみかたが変わるかもしれません。
(^.^)

 鉛筆といえば。
 僕は幼い頃、鉛筆という道具がなぜか嫌いでした。
 なんていうかとっても可愛らしい道具だし、シンプルすぎて使い手の能力や才能がモロあらわれるのが怖いというか……、もちろん当時はそこまで考えていませんでしたが。


>キーボードに向かって、その時々の自分の気持をなぞって

 ↑の部分はむちゃくちゃ共感です。僕はなぞりきれないときのほうが多いですが(笑)、なぞっている時の感覚はキモチイイものですからね。土に埋まっている化石のホコリを払っているような、夜店の型抜きをしているような、なんとも言えないいい感じです。

投稿: ろぷ | 2007/01/11 15:56

 
ろぷさん、コメントありがとうございます。(^^)

そう言ってもらえて嬉しいです。(^.^)

シンプルすぎてという感覚、分かるような気がします。
逆に、シャープペンシルって芯を支えている筒が若干太いから、その中で芯が微妙に動きますよね。
なめらかに速度を落とせるように、車のブレーキにもそんな「あそび」があるそうですけど、それに似てるのかもしれませんね。

>土に埋まっている化石のホコリを払っているような

うん、まさにそんな感じですね!
「はて、この気持は?」と思って色々なノイズを取り除いていくと、見えてくるものがありますよね。
私も決してなぞりきれはしないんですけど。(^^;)

投稿: nanbu | 2007/01/11 19:22

 それにしても惚れ惚れするような仕上がりですね。脱帽です。

投稿: coldgin | 2007/01/11 20:51

nanbuさん、こんばんは~。
あれは「ボンナイフ」っていうのですか~(初めて知りました)

小学生の頃、電動式の鉛筆削りを買ってもらった時…
面白くて何本もの鉛筆をギリギリまで短くしてしまい、親に怒られたものです(;^_^A
それからは割り箸を削る事にしました(笑)

そういえば両側に赤と青がある柔らかめの色鉛筆(ヒモを引っ張ってからクルクル剥がすタイプ)がありましたよね?
今でもあるのかな~?

※(その1)って事は(しょの2)もあるのですね?

投稿: ぽぱい | 2007/01/11 21:12

 
coldginさん、コメントありがとうございます。(^^)

ここはやっぱり鉛筆の写真かなぁ?と思って、前の晩久しぶりに削ってみたんですよ。
削り始めたら結構夢中になっちゃって。
だから、そう言ってもらえてちょっと嬉しいです。(^o^)

投稿: nanbu | 2007/01/11 22:18

 
ぽぱいさん、コメントありがとうございます。(^^)

「ボンナイフ」の名前、なぜか覚えてたんですよね〜。
(検索してみたら懐かしい姿がありました)
それにしても、割り箸を思いつくなんてグッドな発想ですね♪

そうそう!ヒモを引っ張ってクルクル剥がすタイプもありましたね!!
と、思って今筆立てを見てみたら…。
うふ。まさにそのタイプの赤鉛筆が入ってましたよ。(^o^)
(何年前に買ったのかは覚えてないんですけど)

>※(その1)って事は(しょの2)もあるのですね?

ピンポン♪ しっかり(しょの2)まで引っ張りましたぁ。(笑)

●追記:その赤鉛筆、何のために買ったのか忘れてましたけど。
ネガ袋なんかに印を付けるダーマトっていう色鉛筆でした。

投稿: nanbu | 2007/01/11 22:20

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