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2007/09/13

負の連鎖

Yuyake1やってもやっても終わらない。
そんな夏休みの宿題に悶々としていたウチの子。

『サザエさん』じゃ、カツオの宿題を父親の波平とマスオさんが手伝ってあげてたけど。
親の方が理解できないんだから手の出しようがない。

そうやって、最後に残ったのが国語の宿題。
なんでも『今昔物語集』と『羅生門』の相違点を挙げ、感想をまとめるんだとか。

は。ナンデスカ?

なんでも『羅生門』は、『今昔物語集』のお話の一つを題材にしているらしいけれど。
そもそも読んだことないし。
(学校で習ったのかもしれないけど、記憶がないんだからしょうがない)
知ってるのは芥川龍之介の短編小説だということと、黒澤明監督が映画祭でグランプリを取ったことくらい。

ウィキペディアによると「生きるための悪という人間のエゴイズムを克明に描き出し」た作品とのこと。
さっそくプリントに載っていた『今昔物語集』の現代語訳や『羅生門』を読んで、やっと設問の意図が理解できた私。
確かに情景や人物描写はずいぶんと違うけれど。

本人は一日でやると呑気に構えちゃって。(いくらなんでもそれは無理でしょう)
そこで、私が感じたいくつかの違いを挙げると、やっとその気になったらしい。
やれやれ、これでホッと一息。


しかし、読後に残るこのやり切れなさは何だろう。
今度はコッチの方が悶々としてしまった。

エゴに走った老婆が、盗人のエゴによって自分も同じような目に遭う。
そんな因果応報の皮肉な結末が、『今昔物語集』の面白さだとすれば。
『羅生門』は、それでは済まない何かが心に引っ掛かって爪を立てる。

物語の冒頭、「生きるため」とはいえなお悪に逡巡していた下人。
老婆の行為を目にした当初、悪に対する反感すら感じていたのに。
それが老婆のエゴに感化され、いとも簡単に自分のエゴに飲み込まれてしまう。
悪行を憎む気持が、老婆を「さげすむ」という負の感情に変わった時。
老婆と同じ次元まで堕ちてしまうのがくやしい。

負の感情は感染するのだろうか。
眠っていた他人のエゴまで引きずり出してしまうのが恐ろしい。


老婆を蹴倒した瞬間。
作者に見放されたかのように、その後一切下人の心情は語られなくなる。
そして「下人の行方は、誰も知らない。」であっさりと物語は終わってしまう。

置き去りにされた私の気持は、やり場を失う。

のろのろと起き上がった老婆が、覗きこんだ門の下にあったのは夜の闇。
人間の心の深淵にある暗闇に、作者はもう蜘蛛の糸を垂らしてはくれない。

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コメント

あぅぅぅ… 
今昔物語のなかの羅生門の元になったお話は私も知りません。
が、芥川龍之介の羅生門は読みました。一体何歳頃のことだったかしら?
読んでなんともいやぁな気分になって、すみやかに頭の中から
履き出したくなったような覚えがあります。
冒頭の あぅぅぅ… はそのときの気持ちが甦った呻きデス(^^;)

あの…。罪の重さとしてははるかに軽いと思いますが、自動的に変わる
横断歩道で信号待ちをしているとき、後から来た人が車がこないのを
いいことに渡ってしまうと、一緒に待っていた人たちまでがばらばらと
渡っていってしまう、あの現象を思い出しました。
あれも、いってみれば負の連鎖のひとつかもしれない、と思いました。
なんだかそのとき待ち続けている自分の方が馬鹿で間違っているような
気分になってしまうその感情というのも、やっぱり引きずられているから
なんですよね。
世の中の、後を立たない「お金の問題」にも同じような負の連鎖が
あるような気がします。

自分はどうなのかな。悲しいかな、あくまで負の連鎖に引きずられる
ことなく、己を貫ける強い人間ではなさそうです。恐ろしい…
そんな場面に放り込まれないように祈ります~~

添付の写真、すごい夕焼けですね。燃えるような空に光の届かなくなった
真っ黒な山陰が、nanbuさんの書かれた最後の2文と重なりました。

投稿: ポージィ | 2007/09/13 10:50

追伸:
 それにしても、こんな難しい宿題出るんですね。
 ひゃぁ…  大学生レベルに思えました。

投稿: ポージィ | 2007/09/13 10:53

 
ポージィさん、コメントありがとうございます。(^^)

携帯で写真を撮った時は普通の夕焼けに見えたんですけど。
結果オーライだったみたいです。(^o^)

>あれも、いってみれば負の連鎖のひとつかもしれない、と思いました。

実は書いてはみたもののまとまらなくて、この記事から削除した一節があるんですけど。私も同じことを考えていたので、ここに書かせてくださいね。

「『ずるい』と思う気持は『自分だけがソンをしている』という猜疑心にすり替わる。
そんな時、『みんながしている』という自分自身への言い訳は、意外な説得力で迫ってくる。もしかしたら、それは案外身近な感情なのかもしれない。(っと、思う私もエゴイスト)」

負の連鎖って、よこしまな感情を栄養にしてるような気がするんですよね。
せめて虚心坦懐というか、透明な気持でバリアを張れたらいいんですけど。
(とか言いながら、一人だと赤信号を渡っちゃうイケナイ私です)(^^;)>

羅生門、教科書に載ってるんですよ〜。(一学期に習ったみたいです)
もしかしたら自分も習ったかもしれないんですが。
やっぱり「あぅぅぅ…」と思って、忘れちゃったのかも?(笑)

投稿: nanbu | 2007/09/13 12:00

>悪行を憎む気持が、老婆を「さげすむ」という負の感情に変わった時

これ、よくあります。。。
ポージィさんのコメントの横断歩道の話も。。。
私は天邪鬼なので、みんなと同じで安心するタイプではないのですが、
でも、自分ばかりが馬鹿をみているような気持ちになることはしょっちゅうです。
まだまだ人間ができていません。

で、羅生門。
絶対読んでいるんですが、イメージ(暗い)だけで内容がさっぱり思い出せません。
だめだ・・・すっきりしないから読んでみます。

投稿: koko | 2007/09/13 12:39

 
kokoさん、コメントありがとうございます。(^^)

悪行への憎しみが、いつの間にか老婆への蔑みに変わる過程。
原作にはその辺がもう少し詳しく描かれてるんですけど。
陥りやすいワナというか、案外紙一重の感情なのかもしれませんね。
真下に向いてしまったものを押し戻すのは大変ですけど。
斜め下に向きそうなベクトルの先を、ちょっと上向きにするくらいならできそうで。
私も時々立ち止まって、そんな軌道修正をしたいと思っています。
(翌朝になって思い至ったことを、ちょっと書き足させてもらいました)(^^;)

意外なほど丁寧で親切な心理描写が、教科書で取り上げられる理由なのかなと思いましたけど。大人になってから読むと、また違った味わいがあるかもしれませんね。(^^)

投稿: nanbu | 2007/09/13 17:24

nanbuさん、こんばんは~。
>やってもやっても終わらない…

ガハハ~、中学ともなると夏休みの宿題って凄い量ですよね~(よかった~中学生じゃなくて)(笑)

今回nanbuさんは波平さんになってあげたのですね。
凄い!カツオは小学5年生ですけど、nanbuさんのお子様は中学生でしょ!
ぽぱいには絶対に無理です~(>_<)!

おお~っと、こんな時間だ!
やばいやばい早く出なくちゃ…(;^_^A

投稿: ぽぱい | 2007/09/14 18:38

 
ぽぱいさん、コメントありがとうございます。(^^)

>やばいやばい早く出なくちゃ…(;^_^A

「ばねけん」前の慌ただしい折に恐縮です。m(__)m
(この頃私は新宿あたりだったかもです)

昨日お話しながらアレ?と思ったんですが。
早いものでウチの子、もう高校生になっちゃったんですよぉ〜。
(その分歳を重ねた私)(T_T)
波平さんになれなくなったのは中学の頃からですけど。
なんとかその気にだけはさせられてヨカッタです。(^^;)

投稿: nanbu | 2007/09/15 09:20

ゆうべはどうもありがとうございました。
みなさん、もうすでにアップしていますよ。さすがって感じ。nanbuさんの記事も楽しみにしています。(オレは諸事情があって記事にできないのだけど)
これからもよろしくお願いします。ああ、新しいブログも、よかったら覗いてみてください。

投稿: yochy | 2007/09/15 13:28

 
yochyさん、コメントありがとうございます。(^^)

そうなんですよね〜!(・o・)
あれから私はバタンキューだったんですが、いったいみなさんはいつ記事を書いたんでしょう?
いつもながらのバイタリティーに舌を巻きました。
ゆうべはお疲れ様でした、こちらこそありがとうございます。
そして、これからももろしくお願いします。m(__)m

新しいブログも楽しみにしてました。のちほど伺わせてくださいね♪

投稿: nanbu | 2007/09/15 15:36

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