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2008/04/01

おねだり

08yukiyanagi●リターン雑記その9

小学生の頃、父と母との間でこんなやり取りがあった。

それは会社がお休みの日。
買い物に出かけると言う父に、母は「だったら、この子も一緒に連れてって」と言った。
(この子というは、一人ボケっと家にいた私の事)

その時の父の返事が忘れられない。
「一緒に連れてっても『アレ買って、コレ買って』と言わないからつまんねぇ」

それを聞いた私は、「おねだりをされる方が嬉しい」という父の本音を知ってびっくりした。

言われてみれば、確かに私はおねだりをしない子だった。
でも、それには理由があった。


あれはまだ小学生にもなっていない頃だと思う。
親戚が集まった新年会の帰り道、時計屋の前で父に呼び止められた私は、ディズニーの腕時計を買ってもらったのだ。
別に私がおねだりした訳ではなかったけれど、幼い私に断るすべもなかった。

これは一大センセーションを巻き起こしたらしい。

「同じ年頃の子供を持つご近所から、アレコレ言われて困った」
と、後になって母がこぼしていた。
それは一つ屋根の下にいる他の兄弟なら尚更で。
その矛先は当然のように私に向けられた。

こうして私は「イイ目をみると後が怖い」という浮き世のことわりを、幼くして会得してしまったのだった。

実は、私はその他にも子供用自転車を買ってもらっている。
自転車屋さんの前で父に呼び止められる、という同じなりゆきで。
本当にちっちゃな自転車で、すぐに乗れなくなってしまったけれど。

この反響は腕時計の比ではなかった。

私のすぐ上の兄は、行動半径が広がる小学校高学年の頃、自分用の自転車を買ってもらっている。(やはり、需要がでてから供給を受ける方がトクだと思った)
私はといえば、あの件以来「お前は自転車を買ってもらったんだから……」が付いて回った。

兄の自転車を借りながら、「ボクも自転車が欲しい」とは言い出せなかった私。
(あの時、なぜ「いらない!」と言えなかったのかと、長いこと悔やんだものだった)
家族の中に、その時の私の胸中を忖度した者がいたかどうかは、はなはだ疑問である。

そうやって「私だけが子供用自転車を買ってもらった」という事実が、皆の記憶に残っていく。

その時の気分で、後先の事も考えずに行動する。
そんな父の、江戸っ子気質。
そのツケを払わされる身としては、迂闊におねだりもできなかった。


そして現在。
その気質を、決して受け継いでいないとは言えない私。
自分の中のその因子によって、今もツケを払わされ続けている。

'05年8月30日

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コメント

オレは思いっきりイヤな子だったんで(笑)、絶対におねだりをして、その戦利品を兄弟に自慢していましたよ。いまでも語り草なのは、両親にくっついて親戚の新年会に行くものだから、ひとりだけお年玉の額が多い、オレだけヤクルトをとってもらっていた、とかね。でも、兄弟から嫉妬されていても「ケッ」って感じだった。
いい目をみると後に嫌な目に遭う、というのをやっと現在、実感しています(苦笑)。

投稿: yochy | 2008/04/02 05:50

 
yochyさん、コメントありがとうございます。(^^)

「喜ぶ顔が見たい」という気持は、モチベーションとしてかなり上位にある気がするんですよね。だからきっとyochyさんは周りの大人にとって「可愛い子」だったと思います。(逆に、父に甘えられなかった私は「可愛げのない子」だったと)

行動へ駆り立てて目標へ向かわせるモチベーションは、周りにも自分にも好結果をもたらしますけど。
私にはそれが欠けているようだと、大人になってシミジミ実感しています。(笑)

投稿: nanbu | 2008/04/02 09:26

おねだりをできない子ども。
私はおねだりはするべきじゃないと思っていたような気がします。
何かが欲しいという話しはしますが、お店などで「あれ買って~!」と
駄々をこねることはしたことないはず。
「そういうことする子は一緒に連れて行かない。」と釘を刺されて
いたからなんですけどねcoldsweats01
伯母達はよく洋服などを買ってくれましたよ。私にだけで兄には
滅多になかったんじゃないかな。多分兄は嫉妬していたでしょうね。
だからあんまり兄妹仲が良くなかったのかも~。
親には特別扱いされたことはなかったと思いますが。
何人かいる子供達のうち一人にだけ何かを買ってあげるというのは、
兄弟間に羨望やら嫉妬やらなにやら巻き起こしてしまいそうですね。
お父様は末っ子(でしたっけ?)で大人しいnanbuさんに、
何かしてやりたいというお気持ちがおありだったんでしょうね。
でも、その一方で、幼くして世間の厳しさを知ってしまわれた
nanbuさんが、迂闊におねだりできなくなったことはよく分かります。
他の兄弟に「へっへっへ~いいだろ~」って言える性格のほうが
得だな~って思っちゃいます。
 

投稿: ポージィ | 2008/04/02 10:32

 
ポージィさん、コメントありがとうございます。(^^)

体があまり丈夫ではなかったお母様の代わりに、授業参観に来てくれたり。なにかと伯母様達がフォローしてくださっていたと伺っていましたけど。
それもやっぱり「喜ぶ顔が見たい」からだったんだと思います。
男の子に洋服を買ってあげても喜び方はイマイチだし(笑)
なにより可愛いお洋服の方が選び甲斐がありますもんね。

私(ピンポン♪ 末っ子です)が子供の頃は、高度経済成長が始まった時で。
アレヨアレヨという間に世の中が豊かになっていった時代だったせいもあるんでしょうね。
当然、上の兄弟達がしてもらえなかったこともしてもらってたハズだから。
その心境も、また複雑だったと思います。

確かに得な性格ってあるような気がしますね。
でも、それを真似しようとしても出来ないのも事実なので。
その才能を、「人徳」と言うのだろうと思うようになりました。(^^;)

投稿: nanbu | 2008/04/02 13:05

当時ディズニーの腕時計は流行りましたよね~。
nanbuさんのおかげで買ってもらった時の喜びを思い出しました。
オイラが持っていたのは顔が横向きのミッキーで、両手が針になっているタイプです。
やはり(nanbuさんみたいな)友達が持っているのを見て、親におねだりしたんですよ(一人っ子ですから)
最終的に長針(腕)が壊れて下に垂れ下がってしまい、常に“30分”を指すようになってしまいました…

nanbuさんのお父様、ぽぱいみたいに地面に背中を着けてダダをこねる子供だったら、逆にウンザリして連れて行きたくないと思いますよ(笑)

投稿: ぽぱい:(任意) | 2008/04/02 19:52

 
ぽぱい:(任意)さん、コメントありがとうございます。(^^)

おぉ! ぽぱいさんもディズニーの腕時計を買ってもらってたんですね!!
そうです、そうです、両手が針になってて。きっと同じ時計ですね。
(時刻によっては絶対ありえない方向に腕が回ってたりして)
当時としては、とっても高価だったと思うんですが。
後にアメ横で大人買いした時には、その値段に拍子抜けしてしまって。それだけ経済大国になったんだなぁ、と感慨深いものがありました。(笑)
(そういえば、一時話題になった「ダ・ヴィンチ・コード」の主人公がしてたのも、ディズニーの腕時計でしたね)(^o^)

:結局、あの日父は一人で出掛けていきましたけど
(同行)してもらうのは難しいですよね。(^^;)

投稿: nanbu | 2008/04/02 20:55

お父様は きっとnanbu少年が可愛かったのでしょうね
末っ子となれば尚更かなぁ。。

うちの父は甘かったですよ~
欲しい物があれば まず買ってくれるし
堂々と人様の前で「目に入れても痛くない」と言うような
糖分100%な父親でした
お陰で わがままな子供だったと思っています
生きてたら「子育て間違ってた!」って言ってやるのに(^o^)
早くから我慢を覚えたnanbuさんとは えらい違いですね(^_^)

投稿: miki | 2008/04/02 21:18

 
mikiさん、コメントありがとうございます。(^^)

はい。今の私も糖分100%の父親してますが。
その栄養素が今のmikiさんのお人柄を育んだんですね。(^o^)

こうして一つの側面からピックアップすると、そうかもしれないんですが。
子供の頃の私は「自我」というものがなかったというか、それに気づかなかったみたいで。結構脳天気でもありました。(他の兄弟からクレームがつきそうで)(笑)

何かが欲しいと渇望する自我は、目標に向かって邁進する原動力にもなるし。それが薄いのも困ったもので。私の覇気の無さはそこから来てるのかもです。(^^;)>
自我に目覚めてしまった今の私が欲しいのは、好きなことをしていられる自由。
考えてみれば、コレって一番贅沢で欲張りな望みですよね。

投稿: nanbu | 2008/04/03 10:30

私も末っ子だったので、nanbuさんの気持ちがなんとなくわかります。
私はあまり物欲がなく素直で、育てるのがとても楽だったそうです。
洋服だって、はやく姉のお下がりがこないかな~なんて思うくらいで、
新しい自分のものにこだわることもありませんでした。
しかーし!
一度ほしいと思ったら、何が何でも手に入れてました。
それは今でもかわらないかもしれません。
兄は長男と言うことでいろいろ買ってもらっており、
それを見ていた姉は欲求不満。
今でも、「欲しいものを買ってもらえなかった」と言っています。
私は欲しいものが少なかったぶん、確実に手に入れていて
それで不満がすくないのかもしれませんね。
今日の記事には、昔の自分と息子の気持ちをいろいろ考えさせられました。

投稿: koko | 2008/04/03 12:58

 
kokoさん、コメントありがとうございます。(^^)

私も物欲がなかったというkokoさんの気持、わかるような気がします。
少しずつ買い足してもらっていたHOゲージの鉄道模型を、長兄は大事にしていましたけど。私はそれを見ているだけでも結構満足してました。
ただ、kokoさんほど潔くはなかったので、すぐ上の兄とは張り合ってたような気もしますけど。(笑)
そして
>一度ほしいと思ったら、何が何でも手に入れてました。
という気持も、とってもよくわかります。
自分の価値観の上位にあるもの、どうしても譲れないもの。
自分がこだわっているものがハッキリしていたんでしょうね。

あれもこれもというわけにいかないので(金銭的にも体力的にも ^^;)
今の私も、そんな数少ないことに的を絞ってるような気がします。

投稿: nanbu | 2008/04/03 18:08

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